急に慣れない正座をすることになって、しびれて立てなくなったり、ボテコケたりして、恥ずかしい思いをした経験はありませんか?
正座椅子は普通は、正座はできるんだけど、正座に慣れていない人の痺れ防止あるいは軽減のために使われることが多いですね。
しかし、あまりに太っていたり、膝を痛めていたりすると、正座そのものができません。
ここでは、膝が痛くて正座ができない人のために、法事などで正座する必要がある時に使える携帯用の正座椅子を作っていきます。
製作しながら書いていきます。
Contents
正座ができない人のための正座椅子を作る
ところでカモジーは、ジーバー膝腰体操教室というところへ参加しています。
正式な名称は、「福祉センター膝腰元気教室」と言い、厚労省の委託事業で社会福祉協議会でやっています。
ここでは、なにもしていない普通の高齢者よりは、多少は膝や腰の運動をして、ほんの少しは鍛えています。
そのメンバーの女性が先日、お寺での法要に行った際に、正座するので市販の正座椅子を持っていったのですが、かなり膝が痛くて正座の姿勢を維持するのに苦労したそうです。
そこで、膝を痛めた方のための正座椅子を作ることにしました。
この方は体操教室のメンバーで70才前後ですが、以前にヨガで左膝を痛めてしまい、正座が出来なくなってしまっています。
座面の高さが130mmのこの正座椅子では正座の姿勢を取ることができません。
スペーサーを入れて座ってもらうと、160mmの高さでなんとか正座の姿勢が取れます。
一般の市販正座椅子の座面は低い
一般に市販されている正座椅子は100~130mmの高さのものが多いです。
普通に正座すると坐骨の位置は踵と土踏まずの位置の中間より踵よりになり、坐骨底面の高さは約30mmくらいになります。
ですので、普通の正座よりも70~100mm持ち上げて血流を確保してるんですね。
普通に正座できる人にはこれで十分です。
しかし、あまりに太っていたり、膝の故障で関節可動域が少なくなっていたりすると、100mmでは足りないことになります。
市販の正座椅子の中には数は少ないですが、調節可能で190mmまで高くすることができるものもあります。
あまり高いとフォーマルの席では目立ってしまいますので、160~190mmの範囲で作ることにしました。
どのような形態にするか?
このようなTの字形の一本足のかかしのような正座椅子があります。あるいは逆三角形のものもあります。
一見すると安定するのだろうかと思いますが、多少のコントロールで座ることができます。
一般に市販されている平板な正座椅子は、このようなコントロールが不要に見えますが、体幹を真っ直ぐに保つための坐骨周りのサポートが不足していて、高齢者には安定が悪いのです。
坐骨の下の接点部分だけでなく、サイド部分も支えてやる必要があります。
そこで、携帯用ということもあり、自転車のサドルのように坐骨の内側で支えることにしました。
坐骨底部と側面を内側で支えると共に、骨盤底筋を適度に圧迫して、高齢の女性に多い尿漏れも防止しようという目論見です。
製作開始
座面高さが160mmでなんとか正座の姿勢が取れるということなので、まずは少し余裕をみて、高さが170mmの、T字形の機能モデルを作ります。
この方が使っている正座椅子の座面は、左右230mm、前後145mmで、ほぼSPFの2x6の幅140mmが使えるので、パネルソーでバサバサと切ってビス止めして出来上がりです。
ここまでで製作時間は30分。これだけでも、簡単に作れて十分に機能しますので、お知り合いで困っている方がおられたら、作って差し上げると喜ばれると思います。
ここまではすごく簡単ですね。
木工の経験がほとんど無い方でも製作出来ると思います。
家で使うぶんには、これで十分に機能しますが、どこかに携帯するためには少し手間をかけることになります。
重さはこの状態で1100gで、従来使っていたものよりも600g重いので、携帯用とするにはかなりの軽量化が必要ですね。
どのくらい軽量化できるのか分かりませんが、やってみます。
携帯できるように組み立て式にする
組み立て式の方法としては、ボルト式、蟻溝式などいろいろと考えられますが、ここでは単純にノブボルトを使う方法にします。
蟻加工で抜き差しする方法は、乾湿により、抜き差しがしにくくなることがありますので今回はやめておきます。
ノブボルトを使う組み立て式にする
ノブボルトで簡単に組み立てられるようにします。
ノブボルトとは、このように任意の長さのボルトを手で回せるようにしたもので、ホームセンターなどでは一般的によく使われる6mm,8mm,10mm用が置いてあります。
ここでは8mmのものを使うことにします。
位置決めのためにダボをつけておきます。
仮止めした状態で、ノブボルトのための鬼目ナットを入れる穴とダボ用の穴を開けておきます。
ダボ穴の位置はボルトに対して対称だと、組立の時に前後を間違える可能性があるので、ハッキリと非対称にしておきます。
ここまでやって気が付きましたが、仮止めの木ネジの位置を、ボルトと二つのダボ穴の位置にしておくと、仮止めを外して座面と脚それぞれを仮止めの穴をベースにして、別々に加工できるので、やりやすいですね。余計な穴も開かないし・・・
今回は、このまま仮止めの木ネジとは別の所にダボ穴を開けています。
鬼目ナットとは、木にネジ込んで丈夫なネジ山を設けるものです。
これもホームセンターに置いてあり、ネジ径や長さがいろいろあります。
六角レンチでネジ込んで使います。
ボールポイントの六角レンチだと垂直に入っていきませんので、ボール盤に六角を咥えて手回しでねじ込みます。
最後は六角レンチで締めこみます。
ノブボルトが納まる部分は、手で回す時のやり易さと軽量化のために、出来るだけ大きな穴にしておきます。
ここまでで200g減量して900gになりました。
この状態で座ってもらいました。
しっかりと正座の抗重力姿勢が取れていて、S字カーブが出来てます。
この後は、不要部分を取り去り、座面を整形していきます。
不要部分を取り去る
坐骨から大腿骨までの不要な圧迫を軽減し、また軽くするために、自転車のサドルのような形に、座面の不要な部分を取り去っていきます。
丸を書いてあるのは座骨の位置です。
ここまでで600gになり、携帯用の重量として一応の合格点まで来たように思います。
坐骨周りの整形をする
まずは坐骨内側で支えるために坐骨部分を掘り込みます。
大まかにエグリカッターで削っていきます。
エグリカッターでは削れすぎるので、粗いネット状のサビ取りサンダーを使います。
片側を先にやって、様子を見てもう片側をやります。
極圧を高めるような角を出来るだけなだらかにして、血流を阻害する要因を少なくします。
ローラーミニコやペーパーホイールサンダーを使ってなだらかにします。
骨盤底筋をほんの少し押し上げる膨らみを持たせて、尿漏れを抑制します。
ここでまた座ってもらいました。
最終的に550gになり、携帯用として十分な軽さになりました。のはずだったんですが、最後に失敗しました。
というのは、正座椅子を使う時に、畳や座布団を傷めないように脚の下部に大きなアールを付けたのです。座るには問題無いのですが、置いた時の安定が悪くなってしまったのです。
仕方ないので台座を付けた結果、600gになってしまいました。
まぁ許容範囲ということで、許してもらいしょう。
この状態で持ち運びます。
携帯用の巾着袋を作るそうです。さすが主婦ですね~!
カモジーならスーパーの袋にポイポイとなるところです(>_<)
出来上がったら写真を載せます。
なんと三つも作られたんですね~ ビックリ!
使ってみた結果は?
しばらく使ってもらって、感想を聞いてみました。
「座ってみました。凄く楽です!
今 30分弱だと思いますが
仏壇の前で お経(正信偈…55ページ)を読んできました。
座布団を敷かずに畳の上に直でしたが、膝も痛くならず痺れもしません。
姿勢も良くなり、長時間でも座っていられるようになりました。
それに、サドルの形でなじみがあり違和感がなく、とても可愛い形に出来上がっていて、気に入ってしまいました。
試しに、市販の正座椅子でやってみましたが、痛くて1行たりとも読めませんでした。
やはり、それぞれの椅子の高さが要なんですね。
凄すぎです。ありがとうございます。」
なにやら、褒めすぎの感で、記事に載せにくいですが、とにかく良かったです。
エガッタエガッタ(^^)/
まとめ
ジーバー膝腰体操教室の仲間が正座で困っていたので、膝が痛くても正座の姿勢が取れる正座椅子を作りました。
市販の正座椅子は100~130mmのものが多く、膝が痛い方は使えません。
また、高さ調整ができるものはゴツくて携帯用には向きません。
そこで、使う人にピッタリの高さの正座椅子を簡単に作れるようなデザインにしました。
このデザインの各工程の段階のものは、それぞれで機能しますので、お好みで作ってみてください。
特に、木ネジ2本で留める単純なT字形のものは、簡単に短時間で作れますので、お困りの方の日常用に作って上げると喜ばれると思います。
作る工程図が書かれているので、楽しみになりました。
オリジナルで作ってくれるところ紹介して欲しい