パーツをねじ止めしたいんだけど、板が薄すぎてネジが切れないとか、裏に手が入らなくてボルトナットで止められないとかありますよね。

そんな時に役立つのがナッターと言われる道具です。
例によって知ってる人は知ってて、知らない人は知らない道具の名前なんですが

カモジーは数年前までは、このような道具があることを知りませんでした。
知った時は小躍りして喜びましたね。

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薄い板にナットを付けられるナッターとは

リベッターがリベットするものという伝でいけば、ナットするものとかになるんでしょうか。あるいはナットを付けるものといったところでしょう。

具体的にはこんな形をしています。

こんな形のものもあります。(クリックするとアマゾンに飛びます)

山数とはなんじゃい?

ネジのギザギザの断面を見て、山とか谷と呼んでいます。
また、山と山の距離をピッチと呼んで、ネジが一回転する間に進む距離になります。

ボルトとナットで何かを締め付けるには、ナットの有効なネジ山の数は、最低3山が必要と言われています。
とするとM6のピッチは1mmなので、最低3mmの厚さが必要ということになりますね。

この3山という根拠は

ボルト・ナットを締めていくと、最後はボルトが折れるかナットの山が潰れるかします。

そのギリギリの境界線は、ナットの長さがボルトの太さの0.8倍のところになるということが経験上分かっています。

するとM6のボルトに対するナットの厚みは、6×0.8=4.8mmで必要十分ということになります。

M6のピッチは1mmなのでギリギリの境界線は5山になりますが、最低3山あれば有効な締結力は得られるということにしているんですね。

ですからM6の場合は、3mm未満の板では有効なネジは切れないということになります。

で、どうするか?
ナットを溶接する?
そもそも手の入らない所なので溶接は無理!

ここでナッターの出番が出て来るんです。

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薄板にどうやってナットをつけるか?

薄板にナットを付けるには、ブラインドナットというものを使います。

メーカーによって様々な名前が付けられていて、平頭ナット、フランジナット、果てはエビナットなんていうメーカー名がらみのものまであります。

なんかいい日本語訳があるといいんですが。

一般的にはブラインドリベットと同様に、向こう側が見えないのでブラインドナットと呼ばれています。

考え方はこうです。

このブラインドナットにナッターを使わずに、ボルトをねじ込んでいくとします。
するとボルトの首がブラインドナットのフランジに当たって、指の力ではそれ以上回せなくなります。

ブラインドナットはネジ部とフランジ部の間にネジの切っていない薄肉部があり、スパナなどでボルトを締めこんでいくと、この薄肉部が外側に膨らむようになっています。

さらに締めこむとこの膨らみが潰れて来て、最終的に板を挟み込むというわけです。
二段腹とか三段腹で紙を挟むのをイメージするとわかりやすいかもしれません。

ナッターという工具は、ボルトを回す代わりに、ボルトを引き上げて薄肉部を潰す加工をするという構造なのです。

ボルトと言いましたが、実際はネジを切ってある棒のことで、マンドレルとよんでいます。

ですから、ブラインドナットはナッターがないと使えないかというと、そんなことはないわけですね。穴にブラインドナットを入れて、ボルトで締めこんでいけばいいのです。

かなりの力が必要ですが。

実際の作業工程は?

M8を例にして、実際にやってみます。
1.5mmの厚さのステンレスの薄板にM8のブラインドナットを取り付けることにします。

穴をあける

M8のブラインドナットを入れる穴を開けます。
説明書には11.1の穴を開けると書いてあります。
ブラインドナットが入るギリギリの穴です。

薄板の場合は、穴がオムスビになりやすいので、11.1のドリルで開けても11.1Φの真円にはなりません。

ブラインドナットのフランジ(ツバのこと)は厚みを持つものと、加工後は面一(ツライチ=段差がないこと)になるものとがあります。
今回は面一にするために、薄いツバが入り込めるように面取りをしておきます。

11.1Φの真円にした後で面取りをするとバリが出て、ブラインドナットが入らなくなりますから、オムスビの時に面取りをしておきます。

オムスビを11.1Φの真円にするには、円筒ヤスリをボール盤に付けてゴジゴジしますが、11.1の円筒ヤスリでは入りませんので、11.0の先丸の円筒ヤスリでやります。

さて、これでブラインドナットを入れる穴が出来上がりました。

次はいよいよ取付です。

ブラインドナットを取り付ける

ナッターのハンドルを一杯に開いてマンドレルを十分に出しておきます。

マンドレルにブラインドナットを指で回してフランジを着座させます。

穴にブラインドナットをしっかりと入れて、ハンドルを閉じていきます。

ハンドルを閉じていくと、マンドレルが引き上げられて抵抗が大きくなってきます。この時が薄肉部が膨らみ始めた時です。

薄肉部が潰れるに従って更に抵抗が大きくなりますが、かなりガシッとした抵抗になったら、潰れきったところなので終わりにします。

心がズレているように見えますが、上の写真の状態を横から撮ったものです。

材質による違い

この抵抗の強さは、ブラインドナットの材質により、大きく違ってきます。
ブラインドナットの材質は、アルミ・鉄・ステンレスとありますが、この順で硬くなりますので抵抗も大きくなります。

このナッターでステンレスのブラインドナットをやるのは、かなり力が必要です。
ナッターを購入する時は、ステンレスに対応しているかをチェックしてください。

このナットを一回だけの固定に使うのならアルミでいいですが、繰り返し締めたり緩めたりするのだったら鉄以上の材質を使うべきでしょうね。

いずれにせよ、端材で十分に練習して感覚を掴んでから、本番に取り掛かった方がいいでしょう。

このナッターはM3,M4,M5,M6,M8,M10 に対応しています。

空気圧を使うエアーナッター

空気圧で駆動するエアーナッターというのもあります。
たくさんのナットを付けるときや、硬いナットを付けるときは重宝すると思います。

カモジーの工房でも、欲しいですね。
実際に使ってみた結果を、またレビューすることにします。

国産のものもありますが、チョット高くて手が出しにくいです。

まとめ

このナッターを使う前は、薄板に無理くりほんのわずかのネジを切って、すぐにガタガタにしてしまったりと苦労していましたが、今ではガッチリしたナットを簡単に付けれるようになり、パネルソーキットの部材にも多用するようになって重宝しています。

海外製の安価なもので、3年目になりますが、しっかりと使えています。

安かろう悪かろうではありませんでした。

おすすめできます。

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