最近の地球儀は、喋ったり、浮いたリと、目新しいものが多くて、目移りします。
でも「地球儀」として本来の使い方をするのであれば、そうした目新しさなどで選ぶのではなく、しっかりとした基準で選ぶ必要があります。
なぜなら、ヘタに選んでしまうと思わぬ弊害が出てしまうこともあるからです。そこで今回は、お勧めの地球儀を選ぶ基準から徹底解説します。
多くの人は知らずに「メルカトル症候群」に罹患しています。この地球儀はこの症候群の予防や治療に役立ちます。
地球儀を入学祝などに考えておられる方は、お子さまの予防のために、ぜひ参考になさってください。
ここにメルカトル症候群に罹患しているかどうかのリトマス試験紙があります。
イギリスと日本はどちらが大きいか? (答えは少し下にあります)
これに直感的に正解を答えられた方は、以下の記事は必要ないかもしれません。
Contents
どのような地球儀がいいか
1軸はお勧めできない
一番単純な構造の地球儀は、地球の地軸の傾きである約23度にした、軸が一つのごく一般的なものです。北極が上になってるあれですね。
この写真は、便宜上2軸のものを、1軸の形にして撮影してあります。
北極と南極を軸にしてグルグル回るだけです。
この1軸のタイプでは、メルカトルの呪縛から抜け出るには十分ではありませんので、おすすめできません。
おすすめは2軸の全回転型
次は、北極・南極軸に直交した軸を設けて、2軸にしてあるもの。カモジーのはこのタイプです。
そうすると、北極を横に持ってきたり、下に持ってきたりすることができます。
すると、いつも見慣れた世界地図の感覚から放たれて、世界を違った感じでみることができます。
例えば、中国を手前に持って来て、日本をその上に位置するように置くと、中国の上に日本列島が覆いかぶさるようになっているのが、見えます。
自由に太平洋に出れないかんじです。中国からすれば、日本が邪魔物のように見えてきます。
メルカトル症候群とは
この原因の一つは、メルカトル図法による地図の影響です。
メルカトル症候群というらしい。
メルカトル図法は、地球儀を円筒に投影したものです。
小学生の頃、教室に貼ってあったりした、長方形の世界地図ですね。
南極と北極は無限大に横に伸びて、グリーンランドなんて、やけにデカく書かれているあの地図です。
緯度が高くなるほど横幅が大きくなる。それに応じて、形が歪まないように縦も拡大してある。
緯度が60度では、緯度線の長さは赤道の半分なのですが、赤道と同じ長さで書いてあるので、長さは実際の2倍になっているということになります。
縦も2倍にするので、面積は4倍ということになります。グリーンランドはなんと、実に17倍にもなっている!
あの地図による思い込みは、スゴイものがあると思いました。
日本とイギリス、どちらが大きい?
大陸の両端にある島国ということで、日本とイギリスを比較してみると。
カモジーはずっと、イギリスは日本と同じか、少し大きいと思っていました。
イギリスは日本よりもかなり緯度が高いので、メルカトルではその分、横と縦の長さが大きくなっています。東京は北緯35度、ロンドンは51度です。
テンプレートを当ててみると実は、イギリスの北端から南端までは、北海道からほぼ水戸くらいの距離に当たり、日本の方がずっと大きいことが一目瞭然でわかります。
ちなみに、イギリスは244,820km²、日本は377,914km²で、ほぼドイツと同じです。
メルカトルの世界地図しか見ていない人のなかには、いまでもイギリスの方が日本より大きいと、思い込んでいる人がいるのではないでしょうか。
織田信長は贈られた地球儀を前に、うむむ~と唸っていたんでしょうね(笑)
ついでに日本の大きさは?
日本の大きさは、陸上面積で言えば、世界で61番目ですが
EEZ(経済的排他水域)で言えば、世界第6位。
その体積を含めると、世界第4位になります。
意外と大きいんですね。
日本列島は長~い
カモジーのテンプレートは、比較的大きな島である北海道、本州、四国、九州と、南西に伸びる尖閣諸島と、北東に伸びる千島列島北端の占守島までが書いてあるものです。
どこにでも動かせるのですが、ここでは仮に占守島をモスクワに置いてみたとします。
すると、尖閣諸島の位置はどの辺りにくるかというと、なんと地中海の出入口であるジブラルタル海峡の辺りにきます
え~っなんだよこれ~っ! ヨーロッパをまたいでいるじゃないの!
初めて見た時は、日本は小さいと思っていましたので、本当にタマゲテしまいました。
距離感の思い込みは、実際とは大分違ってるな~と思ったのです。
メルカトルでは2点間の最短コースはわからない
日本からアメリカに飛ぶときは、メルカトルでは大きく弧を描いて、大圏コースなんて名前がついていて、はなはだ分かりにくいです。
モスクワからワシントンに飛ぶ場合も、メルカトル上では直感では横に直線を引きたくなりますが、地球儀でみると北極を超えていくんです。
モスクワとワシントンをゴム紐でむすぶと一発でわかります
戦略的な見方をする時は、ポーラーステレオ図法(単にポーラー図法ともいう)と言う、北極を上から見た地図を使うんですね。
国際民間航空機構(ICAO)では、極地方の航空図として使用しています。
ちなみに、この写真の北極に付いている、丸いプラ板は世界時計です。
北が上という思い込み
メルカトルでは、北が上になっています。
ですから、世界を見るときに、常に頭の中では上が北の絵を見ていることになっている。
そうすると、ある地域を縦横斜めから見ることができず、非常に狭い見方しか出来なくなっているんですね。
メルカトル症候群の根本的な治療法
このテンプレートを地球儀の軸を支える枠に、この字型のプラ板を付けて自由にスライドできるようにしてあります。
このアイデアはその昔、渡辺教具に提案したのですが、ガンコなやつで、その時は却下されてしまいましたが、いまは、カモジーのものとは形は違いますが、テンプレートの形で付けているようです。
さらにカモジーの地球儀は2軸を支えている枠が、地球儀の台にくっついている部分も回転できるようにしてあります。
このようにすると、なんの制約もなく、自由自在に地球をグルグルさせることができます。
このように地球儀を縦横斜めにグルグルさせて使っていると、さすがに強固なメルカトル症候群も、次第に快方に向かうことと思います。
地球儀にテンプレートを当てるといろいろわかる
カモジーは直径が330mmの地球儀を使っています。
同窓生だった渡辺教具製作所という会社が作っているものです。
アマゾンで見ると、25,700円と、他のものに比べると高価ですが、それなりのことはあります。
実物を見ると分かりますが、海外製と違って、緻密で堅牢に作られていて、一生モノです。孫の代まで使えます。
また、ボード用マーカーで書いたり、消したりできるので、国が新しく出来たりなくなったり、国境線が変わっても対応していくことができますね。
この地球儀上での1cmは実際の距離は400kmになります。
これだけでも、おぼろげに距離感が分かってきますが、日本列島のテンプレートを作って、あちこち動かしてみるとさらに距離感がついてきます。
このテンプレートはいろいろな使い方ができます。
上に書いたほかにも、例えば、枠にテンプレートを固定して、日本の上に重ねて置いて地球をグルグル回すと、同緯度にある国に重ねて次々とみていくことができます。
すると同じ緯度なのに、どうして気候がこんなに違うのかとか、横でグーグルアースを開いて地球儀と一緒に見てみると、バーチャルのグーグルアースを見ているだけではわからないことも見えてきます。
日本から出たことがないひとでも、例えば、東名を走って大阪まで行ったことがあるとすると、テンプレート上で具体的に見れますね。
テンプレート上の距離と実際の自分の体験がつながるわけです。
このテンプレートは、その辺の透明なビニール袋を適当に切って、地球儀に当ててマジックで日本の外形をなぞれば、簡単に作れます。
この写真のテンプレートは、プラ板で作って地球儀の枠上をスライドして、どこでも留めることができるように、この字状のものを接着してあります。
このテンプレートを地球儀上でいろいろ、動かしてみると、日本国内を旅した範囲の距離感は持っているので、行ったことがない世界の裏側の国にテンプレートを重ねた時に、距離や大きさが、自分の持っている距離感で測れて実感できるようになります。
例えば、ロンドンからプリマスの距離はどのくらいだろうかと思って、テンプレートを当ててみると、あーこれくらいの感じなんだと、具体的にイメージできます。
なんだ意外と近いじゃん、なんて思う訳です。
昔、若い頃にアメリカの東海岸のニューヨークから、西海岸のサンフランシスコまで引っ越すのに、車で移動するから付き合わないかと誘われましたが、その頃はアメリカはただただ、だだっ広いというイメージしかなく、恐れをなしてお断りしました。
今ならテンプレートを当てて、ああこのくらいなのねと想像がつきます。
もっともカモジーの年になると体力を考えて、腰が引けますがね。
まとめ
おすすめの地球儀は
- 最低限直径が300mm以上のもの
- 北極・南極の1軸だけのものではなく、2軸の全回転型のもの
- 出来れば日本のテンプレートが付属しているもの
もっとも、このテンプレートは自分で使いやすいものを自作できるので、絶対ではありません。
特に入学祝いなどでプレゼントをすることを考えている場合は、必ず2軸の全回転型を選んでください。
お父さんにはメルカトル症候群の治療になり、お子さんには予防になります。
後で親子共々に感謝されること請け合いです。
予算の関係で1軸を考えておられるなら、ビーチボール型の地球儀のほうが、1軸のものを選ぶより、まだマシです。
ただし、ビーチボール型は、空気が抜けてくる場合がありますので、出来ればしっかりした、2軸全回転型を選ぶことを強くお勧めします。
プレゼントでは、喋る地球儀が人気ですが、喋る地球儀に付いて掘り下げたサイトがあるので、紹介します。
地球儀を買ってきて、そのままにしておくのは、はなはだ勿体ないことです。
インテリアの飾り物のように、棚の上に置いてあるだけなんてもったいない!
机の上の片隅に置いて、いつでもグルグルできるようにしておくことがおすすめです。
いまは、磁気の力で地球儀を浮かせて自由に動かせるものもあるようです。
ホワイトボードのように使える白地図の地球儀もあります。
メルカトル症候群から抜け出して、いろいろと改造して思いっきり楽しんでください。